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絵本『いやしのもり』のタイトルが決まるまでには、意外なエピソードがありました。
このタイトルにはある方の強い思いが込められており、絵や文と同じほど大切なものでした。
どんなエピソードがあったのか、舞台裏での出来事をお話ししたいと思います。
◆タイトルに込められた思いとは
初めて『いやしのもり』という絵本タイトルを見てどう思われたでしょうか?
なんとなく「いやし(癒し)」という言葉は、小さな子供には分からなさそうだな、もしかしたら大人でも分からないので、絵本のタイトルには向かないのかもしれないな、と思われた方もいらっしゃるでしょうか。
実は私(代表の村主)もそう思っていました。
しかし、それがまったくの大人の思考による思い込みであり、むしろこの絵本は『いやしのもり』というタイトル以外には考えられないことに気づかされました。
また、絵本のタイトルを決める時に、小さな子供に意味が分かるか分からないか、ということを考えるのは無意味だと気づかされました。
それを気づかせてくれたのは、絵本『いやしのもり』の絵を描いたはなさんでした。
まさに目からうろこでした |
実はこの絵本が完成する前に『いやしのもり』は、とりあえずのタイトルであり、最終的には小さな子供にも分かるもっと簡単なタイトルに決めるものと私は思っていました。
ちなみに『いやしのもり』というのは、はなさんが子供の頃に迷い込んだ不思議な森の呼び名でした。
いつから『いやしのもり』と呼ぶようになったのかは定かではないですが、気づけば、そう呼ぶようになっていたそうです。
絵本の完成も近づいてきた頃、私ははなさんに最終的なタイトルについて意見を求めました。
「これまで、とりあえず『いやしのもり』としてきましたが、いくつか挙げたタイトル候補の中から、最終的な絵本のタイトルを決めようと思っています。
何かご意見はありますか?」
はなさんは沈黙し、少しばかり考えてから答えてくれました。
「私は描いたすべての絵について『いやしのもり』だと思って描きました。
この絵を絵本にするなら、タイトルは『いやしのもり』以外には考えられないです。
でも最終的には村主さんが決めることなのでお任せします。」
あれ?今までと様子が違う |
これまでになかったはなさんの強い口調に私は少し驚いて何も言うことができませんでした。
絵本を出版するのだから、小さな子供にも分かりやすいもっと簡単なタイトルのほうが良いって言っているのに分からない人だなあ・・・と内心ちょっとむっとした気分でした。
とはいえ、これまで穏やかだったはなさんがあれほどまで強い口調で『いやしのもり』という言葉にこだわったのは何だったのか、しばらく喉につっかえたような日が続きました。
結局、それはよく分からず、絵本のタイトルも決まらないまま時が過ぎていきました。
そんなある日。
私はふとある言葉を思い出しました。
宮沢賢治のイーハトーブ
初めて知った方はなんだそれ?という感じかもしれませんね。
イーハトーブは宮沢賢治による造語で、理想郷を指す言葉と言われています。
宮沢賢治と言えば岩手県出身の童話作家です。
彼の童話の世界の中にイーハトーブが存在したのでしょう。
おそらく彼自身が童心に帰って理想の世界を思い浮かべていたのだろうなと思いました。
そんな彼がイーハトーブと言うのだから、誰がなんと言おうがイーハトーブなのですよね。
そこに意味を求めても、無意味でしょう。
子供が意味の分からない言葉を口にするのと同じで。
私はふとそんなことを思い出しながら、ハッと気づきました。 |
ん?待てよ
はなさんがいつしか『いやしのもり』と呼んでいたのも、まったくイーハトーブと同じじゃないか!という気づきが、一瞬にして脳裏を駆け巡りました。
当時のはなさんは「いやし」の意味を分かっていたのかどうかも分からないですが、とにかく、迷い込んだ不思議な森という理想郷をいつしか『いやしのもり』と呼んでいたわけです。
誰がなんと言おうが、はなさんにとっては『いやしのもり』なのです。
絵本に「いやし」という言葉を使うと、小さな子供には分からないとか、大人でも分かりにくいとか、そんなことは関係ないのです。
小さな子供が大人になっていく過程で、その意味を知るかもしれない、あるいは一生意味を知ることがないのかもしれないですが、そんなことも関係ないのです。
その『いやしのもり』という響きこそが、はなさんにとっての理想郷を表現するたった一つの言葉なのだから。 |
そういうことだったのか・・・
私は遠回りしてしまいましたが、はなさんの心を見ました。
なぜはなさんはあれほどまでに『いやしのもり』という言葉にこだわって、それをタイトルにすることを望んだのか、ようやく気づくことができました。
そんな大切な言葉を絵本のタイトルに使わず、小さな子供でも分かるタイトルにすることばかり考えてしまっていた自分を恥じました。
まさに大人の思考による思い込みにとらわれていたということでしょう。
絵本『いやしのもり』はこのタイトル以外には考えられないのです。
そうして、はなさんがずっと大切にしてきた『いやしもり』という言葉が、この絵本のタイトルになりました。
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タイトルが決まった後、うさぎのような『ぴょん』が現れて、絵本の表紙をこっそり仕上げたようですが・・・(真相はこちら) |
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